暗号資産市場では、10月末から11月初旬にかけてビットコイン(BTC)が一時的に下落し、相場の方向感がつかみにくい状況が続いています。bitbankアナリストの長谷川友哉氏による最新レポートでは、「ビットコインは売られ過ぎ水準にある」としながらも、今後の金融指標によっては12月利下げへの期待が再び高まる可能性が指摘されています。本記事では、その内容を初心者でも理解できるように解説します。
ビットコインの現状:1670万円周辺で推移
2025年10月末の時点で、ビットコインの対円相場はおよそ1670万円前後を推移しています。週明けには米中通商協議の改善期待を受けて一時1750万円~1780万円台まで上昇しましたが、その後は下落に転じました。背景には以下のような要因が挙げられます。
- 米中協議の結果に対する市場の反応(期待と失望の繰り返し)
- ライトコイン(LTC)など現物ETF上場後の「事実売り」
- 米連邦公開市場委員会(FOMC)でのパウエル議長の発言
これらの要素が重なり、BTCは1700万円を割り込む局面も見られました。特に30日に行われたFOMCでは、「12月の利下げはまだ既定路線ではない」との発言があり、市場の期待が一時的に冷めた形となりました。
米中関係がビットコイン相場に影響
今回の週次レポートで注目すべきは、ビットコインの値動きが米中関係のニュースによって大きく揺れた点です。
30日に韓国で行われた米中首脳会談では、記者会見や公式発表がなく、市場では「交渉決裂か?」との不安が広がりました。その結果、BTCは一時1655万円まで急落しました。しかし、直後にトランプ大統領が「レアアース問題は解決した」「会合は10点中12点」と発言したことで安心感が広がり、BTCは1710万円まで反発しました。
このように、ビットコイン市場は米中関係や米国の金融政策など、世界経済のニュースに非常に敏感に反応する傾向があります。特に最近は、ビットコインが「デジタルゴールド」としてだけでなく、「リスク資産」としても扱われているため、株式市場と同様の動きを見せることが多くなっています。
FOMCと金利政策:利下げ期待はどうなる?
FOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエル議長の発言により、市場では「12月の利下げはまだ遠い」と受け止められました。しかしbitbankアナリストは、「データ次第で政策が動く余地は依然としてある」と分析しています。
特に注目されるのは、今後発表される以下のような民間経済指標です。
- ADP雇用統計(雇用の勢い)
- ISM製造業・非製造業PMI(景況感指数)
- ミシガン大学消費者信頼感指数
これらのデータが「景気減速」を示す結果となれば、市場は再び利下げ期待を強める可能性があります。利下げが実現すれば、投資マネーが再びビットコインなどのリスク資産に流入し、価格の押し上げ要因となることが考えられます。
オンチェーンデータの動向
オンチェーンデータ(ブロックチェーン上の実際の取引データ)からも、ビットコインが「売られ過ぎ」と見られる傾向が出ています。
- 取引数:月次ベースで減少傾向にあるが、底打ちの兆し
- アクティブアドレス数:一時的な減少後に安定化傾向
- マイニングプール送金先:取引所への送金減少(売り圧力の低下)
つまり、投資家の多くは一度売り切った後の静観モードに入っており、新規売り圧力が弱まっているとも考えられます。この点でも、テクニカル的には「売られ過ぎ水準」にあるとの見方が支持されます。
テクニカル分析:逆三尊の形成なるか
bitbankの分析では、ドル建てBTCチャート(日足)で「逆三尊(ヘッドアンドショルダーズボトム)」が形成されつつあるとの見方が示されています。これは一般的に底打ちのサインとして注目されるパターンです。
ただし、現時点ではまだ2番目のショルダーを形成中と見られ、相場がこれ以上押すと1番目のショルダーを割り込むリスクもあります。つまり、今はギリギリの耐久局面と言えるでしょう。
一方で、11万6,000ドル(約1,700万円)付近のネックラインを明確に上抜ける動きが出れば、上昇トレンド転換のシグナルになる可能性があります。
今後の注目ポイント
来週に向けては、以下の3点が焦点となります。
- ADP雇用統計・ISM指数の結果:景気鈍化なら利下げ期待が強まりBTC上昇の可能性
- 米中関係の追加報道:改善ムードが続けばリスクオンに
- テクニカル節目(1670~1750万円)の攻防:このレンジを抜けるかが次のトレンドを決める
専門家は、「今は過度に悲観する必要はない」と指摘しつつも、「指標結果次第では再びリスクオンムードに転換する可能性がある」と述べています。
初心者へのアドバイス:焦らずデータを追う
ビットコインの短期的な値動きはニュースや経済指標によって大きく変動します。しかし、焦って売買するよりも、まずは「なぜ動いたのか」を理解することが重要です。
特に今回のように、米中関係やFOMCといったマクロ要因が影響している場合、1日や2日の値動きで判断するのは危険です。bitbankのような分析レポートを定期的にチェックし、オンチェーンデータやテクニカル指標を冷静に見ることで、感情に左右されにくい投資判断ができるようになります。
まとめ:売られ過ぎの今こそ冷静な判断を
今回のbitbankアナリストレポートでは、ビットコインが短期的に売られ過ぎの水準にあることが示唆されました。とはいえ、金融政策や米中関係といった外部要因に大きく左右される相場環境が続いています。
来週発表されるISMやADP雇用統計などが弱ければ、12月利下げへの期待が再び強まり、BTCが反発する可能性もあります。長期投資家にとっては、こうした調整局面を冷静に観察しながら、次の上昇トレンドを見極めるチャンスと言えるでしょう。
今後も、bitbankなどの国内取引所アナリストによるレポートは、市場の方向性を読む上での貴重な指標となります。相場の波に振り回されず、「なぜ今こう動いているのか」を理解する姿勢が、勝ち残るための第一歩です。


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